5月の第2日曜日に制定されている母の日。母の日の定番といえば、カーネーションのプレゼントですよね。最近では、カーネーション以外の花・小物・化粧品・スイーツなどの贈り物も主流になっています。
実は母の日は世界各国で制定されており、お祝いの仕方もさまざまです。中には、「他の国では母の日をどうやって過ごしているの?」「日本との違いはあるの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、母の日の起源や日本に伝わった時期などについて解説しつつ、世界各国の母の日事情を紹介します。「国ごとの母の日の違いを知りたい!」という方はぜひ最後までご覧ください。
母の日はいつから始まった?
母の日の起源は、アメリカでのとある出来事だといわれています。ここでは、母の日の起源や日本に広まった時期などについて解説します。
母の日の起源はアメリカ
母の日がなぜ始まったのかについては諸説ありますが、最も広く知られているのがアメリカ発祥説です。
1907年にアメリカ在住のアンナ・ジャービスが亡くなった母親のための追悼会で、母親が生前好んでいた白いカーネーションを参列者に配ったことが母の日が広く知れ渡る最初のきっかけになったといわれています。
その後、1914年に当時のアメリカ大統領ウィルソンが、アンナの母の命日である5月の第2日曜日を、正式に国民の祝日として「母の日」に定めました。
母の日は世界平和について考える日だった?
先ほどお伝えした通り、アンナの行動が現在の母の日を形づくったわけですが、実は母の日は単に母親に感謝するためのものではなく、母親たちによる社会運動の記念に制定されたものなのです。
アンナの母親であるミセス・ジャービスは牧師と結婚後、10人の子供を儲けました。のちに10人の子供のうち、8人は戦争や病気で亡くなることになります。
ミセス・ジャービスは1858年に「Mothers’ Day Work Club(母の日仕事クラブ)」を結成し、病気の人のための募金活動や病気予防のための食品検査などに取り組みました。また、南北戦争時代には「Mother’s Friendship Day(母の友情の日)」と題し、南北双方の兵士および地域の人たちを集めて親交を深めるイベントを開催しています。こうしたミセス・ジャービスの平和に向けた活動は、女性が社会的弱者として扱われていた時代に大きな影響を与えました。
ミセス・ジャービスが亡くなったのは、ちょうど女性の社会活動が盛んに行われていた時期で、だからこそ追悼会でのアンナの行動に注目が集まったのです。アンナは母親の追悼会以降、すべての母親の「社会貢献」を称えるべく「母の日」を定めるための活動に取り組んできました。つまり、母の日とはアンナの母親をはじめ、すべての母親たちの平和を目指す活動を記念するものだったわけです。
母の日が日本に伝わったのは明治時代
母の日が日本に伝わったのは、明治時代末期だといわれています。大正時代にはキリスト教関係者の間で母の日が広く周知され、カーネーションを配るイベントが行われていました。その後、昭和に入ってから大日本連合婦人会が結成されたことがきっかけとなり、1931年に皇后の誕生日である3月6日が母の日として定められました。
1937年に森永製菓が開催した「森永母の日大会」によって、母の日をより広く普及することになります。そして、アメリカにならって5月の第2日曜日を「母の日」と制定したのが1947年の出来事です。
母の日にカーネーションを贈る意味
カーネーションが母の日を象徴する花とされているのは、母の日制定のきっかけとなったアンナの行動が理由です。
先ほどお伝えした通り、アンナは母親の追悼会で白いカーネーションを祭壇に手向け、参列者にも同じものを配っています。
やがて、白いカーネーションは「亡くなった母親へ」、そして赤いカーネーションは「生きている母親へ」贈られるようになりました。
日本でも当初は白いカーネーションと赤いカーネーションとで区別して母の日をお祝いしていましたが、母親を亡くした子供たちの差別につながるとしてすべての母親に「赤いカーネーション」を贈ることが一般化したのです。
母の日は世界共通?「5月第2日曜日」の国一覧
多くの国がアメリカにならって「5月の第2日曜日」を母の日として定めています。ここでは、5月第2日曜日を母の日としている国々を挙げ、母の日のお祝いの仕方や過ごし方を紹介します。
- アメリカ
- オーストラリア
- イタリア
- フィンランド
- トルコ
アメリカ
母の日の発祥の地とされているアメリカ。アメリカでは「母の日=母親を労う日」ととらえられており、母親と一緒にゆっくり過ごすのが定番です。カーネーションをはじめ、バラやチューリップも贈り物として人気があります。また、メッセージカードを贈るのも定番です。
オーストラリア
オーストラリアの母の日には、菊の花を贈るのが一般的です。南半球にあるオーストラリアでは秋に母の日を迎えます。秋はちょうど菊の花がきれいに咲く時期なのです。また、菊は英語名「chrysanthemum(クリサンセマム)」といい、”mum”の略称で親しまれています。mumといえば、「お母さん」の意味を持つ単語ですよね。こうしたつながりから、母の日には菊の花が贈られています。
オーストラリアでは、レストランで食事したりビーチでのんびりしたりして母の日を過ごします。
ちなみに、母の日に花以外の贈り物をする習慣はオーストラリアから始まったとされています。1924年に、ジャネット・ハイデンが老後施設で暮らす独り身の母親たちに贈り物をする活動を始めたことをきっかけに、贈り物の習慣が広まりました。
イタリア
イタリアにも、母の日に生花・メッセージカード・プレゼントなどを贈る習慣があります。生花の贈り物で人気なのがアザレアです。アザレアは別名西洋ツツジと呼ばれるツツジの一種で、イタリアでは母の日が近くなるとアザレアの鉢植えが販売されます。
ただし、イタリア人には愛情深い国民性があり、日頃から母親への感謝を伝えているため、日本ほど母の日のイベントは盛大ではありません。
フィンランド
フィンランドには、子供たちが母の日当日に早起きをして母親のために朝食を準備し、ベッドまで運んでサプライズする可愛らしい習慣があります。また、母の日の定番の贈り物は、ヴァルコヴァッコという花です。日本語では白いアネモネと呼ばれており、子供たちが野原や森で摘んでくるんだとか。その他、ミニバラも母の日のプレゼントとして人気です。
トルコ
トルコでは自分の母親のみならず、すべての母親に「母の日おめでとう」と声をかけます。トルコ人は家族の結びつきを大事にしており、中でも母親は敬意を受けるべき存在とされています。
トルコでは、赤いカーネーションは殉教者や殉職者に手向けるイメージが強いため、母の日のプレゼントにする習慣はありません。母親の好みに合わせて、生花・小物・衣類などが贈られます。
世界には5月第2日曜日以外が母の日の国も!
世界には5月の第2日曜日以外を母の日としている国もあります。ここでは、それらの国の母の日の起源や過ごし方を紹介します。
- イギリス
- フランス
- ハンガリー
- タイ
- エジプト
- ネパール
- 韓国
イギリス
イギリスの母の日の起源は、イースターの前に祝われるキリスト教の祭日「Mothering Sunday(マザリングサンデー)」だといわれています。イースターとは春分から数えて最初の満月の次の日曜日を指し、イギリスの母の日はイースターの2週間前と定められています。
Mothering Sundayはもともとマザー・チャーチに訪れる日のことで、家族そろって教会に集まるのが定例でした。時が経つにつれ文化が変化し、母親に感謝を伝える現在の母の日になっていたんだとか。
イギリスで母の日の贈り物として人気なのは、ダファディルです。ダファディルは、日本語でラッパスイセンと呼ばれ、イギリスでは春を告げる花としても知られています。ちなみにラッパスイセンは、イギリス連邦を構成する1つであるウェールズの国花にもなっていますよ。
フランス
フランスでは、5月の最終日曜日を「フェト・デ・メール(母親の祭日)」と定めています。政治家ジョルジュ・クレマンソーの提案によって、フランスの母の日が誕生しました。
第一次世界大戦時、フランスでは多くの家庭が父親を失い、母親が1人で家族を支えていました。そのような状況で声を挙げたのがジョルジュです。ジョルジュは、1917年に母親たちに敬意を示す日を制定することを提案しました。その後、1920年にフランス政府によって母の日が正式に定められたのです。
フランスでは日本のようにカーネーションを贈る習慣はなく、基本的には母親が喜ぶものをプレゼントします。
ハンガリー
ハンガリーの母の日は、5月の第1日曜日です。正式には母の日ではなく、「女性の日」として定められています。女性の日には、子供からお年寄りまで年齢問わずお祝いされ、生花やプレゼントが女性に贈られます。
タイ
タイでは1976年の制定以降、毎年8月12日に母の日が祝われています。8月12日はタイの国王ラーマ9世の王妃である「シリキット」の誕生日です。母の日にはシリキット王妃の写真や絵があちらこちらで飾られ、国民はシリキット王妃のシンボルカラーである水色の服を着用します。
タイの母の日の定番といえば、ジャスミンの花。多くの人がジャスミンの花を数珠上につないだ「プアンマーライ」を贈ります。
エジプト
エジプトの母の日は3月21日です。エジプトの女性がスカーフをまく風習があることから、母の日の時期には街のあちこちに色とりどりのスカーフが並びます。
母の日にダンスの発表会などのイベントを開催する学校も多く、学校から風船やアラブ菓子がプレゼントされます。
ネパール
ネパールでは、4月末~5月上旬のどこか1日を母の日としています。「母の顔を見る日」として祝われ、母親には甘い菓子や果物などが贈られます。
また、ネパールには結婚して初めて母の日を迎える女性がごちそうを手作りし、実家の母親へ届ける風習があるんだとか。
韓国
韓国には、毎年5月8日を母の日・父の日を両方兼ねた「オボイナル(両親の日)」としています。韓国人は儒教の教えにもとづいて親を大切にする意識を強く持っており、韓国人にとってオボイナルは重要な日なのです。
カーネーションを贈る風習は日本と同じですが、花束やアレンジメントがとにかく大きくて派手なのが特徴です。
父の日も世界共通なの?
日本では6月の第3日曜日でお馴染みの父の日。その発祥はアメリカといわれており、現在同様に父の日をお祝いしている国はたくさんあります。ただし、父の日が制定されている日付は、国ごとで異なります。
6月第3日曜日 | アメリカ 日本 カナダ イギリス アイルランド アジア諸国 |
3月19日 | イタリア ポルトガル スペイン |
5月(キリストの昇天祭) | ドイツ |
5月8日(オボイナル(両親の日)) | 韓国 |
8月8日 | 台湾 |
8月第2日曜日 | ブラジル |
9月第1日曜日 | オーストラリア ニュージーランド |
12月5日 | タイ |
父の日は、アメリカの1人の女性の行動によって誕生しました。ワシントン州に住むソノラ・スマート・ドッドの父ウィリアム・ジャクソン・スマートは、南北戦争後に妻を亡くし、男手1つで6人の子供を育てました。その後、再び赴いた戦地で亡くなってしまうわけですが、ソノラは自分たちを育て上げてくれた父を称えたい思いで「父に感謝する日」の制定を牧師協会に訴えたのです。
1910年、ウィリアムの誕生日であった6月の第3日曜日に最初の父の日とされている記念式典が開かれました。その6年後にはウィリアム大統領が式典に参加し、父の日を国の記念日として制定する告示が出されたのは、ジョンソン大統領下にあった1966年です。それから数年が経った後、1972年に6月の第3日曜日が正式に父の日として定められました。
日本へは1950年代に父の日が伝わりました。ところが、広く普及するのには時間がかかり、今のように周知されるようになったのは1980年代ごろだといわれています。
日付や文化は違えど、母の日を大切にするのは世界共通
母の日は、日本以外の国々でも制定されています。中には日付やお祝いの文化が異なる国もありますが、「母親を大切にする心」や「母親に感謝を伝える風習」は世界共通です。こうして見ると、あらためて母親の偉大さを認識しますよね。母の日には、ぜひ日頃の感謝を伝えてみてくださいね。